写真フィルムの劣化「加水分解」と
その対処法は?

デジタル化

加水分解とは

写真フィルムに使われた支持体の素材は、大別すると「硝酸セルロース」「酢酸セルロース」「ポリエステル」と進化しました。この中で写真フィルムの保存において特に注意が必要なものは、「硝酸セルロース」と「酢酸セルロース」です。硝酸セルロースフィルムは、化学的に非常に不安定で、加水分解はもとより、燃えやすく自然発火の危険性すらあります。

この危険な硝酸セルロースフィルムに代わり、1950年代頃からは「safety Film(安全フィルム)」とも呼ばれる「酢酸セルロース」フィルムが主流となりました。加水分解は、この安全フィルムともいわれていた「三酢酸セルロースフィルム(TAC)」の代表的な経年劣化の症状で、保存環境によって差はあるものの必ず劣化(加水分解)が発生します。劣化が進むと最悪の場合、加水分解でフィルムベースがバラバラになり、複製やデジタル化での保存もできなくなり、せっかく撮影した写真を永遠に失うことになってしまいます。

フィルムの劣化の進行を遅らせることはできても、劣化を完全に食い止めることは不可能です。そうなる前にデジタル化や複製など、別媒体への移し替えが必要となります。

加水分解は「水分」「熱」「酢酸ガス」が主たる原因です。

フィルムには酢酸セルロースという成分が含まれていますが、経年劣化により酢酸が空気中の水分に溶け出し加水分解を起こし、酢酸ガスを発生します。さらに自己発生した酢酸ガスをフィルム自身がばく露すると、加水分解は加速度的に進行していきます。そのため高温多湿下の環境で、密閉した容器で保存していると酢酸ガスの濃度が上昇し、自己中毒に陥り、加水分解は非常に早く進行します。

フィルムの劣化は次のように進行します。

① 健全な状態

健全な状態

② 酢酸ガスが発生し酢酸臭(酸っぱいにおい)がする
③ フィルムベースが硬化、カーリング(丸まる)

フィルムベースの硬化

④ フィルムベースの溶融
⑤ 画像層の分解

 画像層の分解

⑥ フィルムベースの分解

フィルムベースの分解

①、②の段階であれば複製やデジタル化、保存状況の改善という方法がとれますが、②以降では再生が不可能となります。さらに⑤以降では画像自体が分解されてしまい、資料としては全く活用できなくなってしまいます。
また、酢酸ガスが発生するとフィルム自身から出たガスによりそのフィルムを加速度的に加水分解させるだけでなく、近くにあるフィルムにも伝染・拡大していきます。

対策について

① 健全な状態

まずは劣化のない健全な状態のうちにデジタル化や複製を行っていく事が重要です。その上でJIS規格の酢酸セルロース(セルローストリアセテート:TAC)ベースの白黒フィルムの長期保存条件*1に準じた保存や専用容器へ収納することをおすすめします。
*1: 相対湿度 15-50%、最高許容温度 21℃

② 酢酸ガスが発生し酢酸臭(酸っぱいにおい)がする

酢酸ガスが発生しているだけの段階であれば、デジタル化や複製を行うことはもちろん、JIS規格の酢酸セルロース(セルローストリアセテート:TAC)ベースのカラーフィルムの長期保存条件*2に準じた環境下、または東京都写真美術館における特別収蔵庫Cの環境下*3での保管や、酢酸ガスの発散・吸着を助ける専用容器への収納を急ぐ必要があります。
*2:相対湿度 15-30%、最高許容温度 2℃
*3: 相対湿度 45%、最高許容温度 5℃

③~⑥(分解が始まっている、または進行しているフィルム)

分解が始まっているフィルムに対しては、残念ながら再生の手立てがありません。今後使用しないことを前提に、現状での冷凍保存による物理的な保存を行います。

保管について

写真フィルムの状態は保管されている環境によってさまざまで、「湿気を避ければ」「ガスを除くため換気をすれば」「保存容器に入れさえすれば」などの対策だけでは、こうしたから劣化を完全に防ぐことはできません。

上述したとおり、写真フィルムは遅かれ早かれ必ず劣化します。劣化する前にデジタル化や複製などの別媒体で保存することはもちろん、劣化しはじめたフィルムは現状に適した保管方法で、劣化の進行を少しでも食い止める必要があります。

ところで、デジタル化といっても解像度のレベルは?
複製の仕方は?現状に適した保管方法は?
など、お客様ご自身での判断はなかなか難しいと思います。

堀内カラーでは、様々なスキャニング機材とともに、プロラボとして60年間培った信頼やアーカイブ専門部隊のノウハウ等により、保管方法への適切なアドバイスからアーカイバル保存包材*4への収納まで、ワンストップでのサービスを提供しています。

*4:アーカイバル保存包材について
・資料を劣化させる外気中の汚染物質をシャットアウトすることはもちろん、資料そのものから発生する酸性ガスを吸収したり、温度変化が資料に与えるショックを緩和したりする効果をもっています。
・アーカイバル保存包材の主原料となる段ボールや厚紙は、純粋なケミカル・パルプを原料に、弱アルカリ(㏗7.5~8.5)になるように調整しています。組み立てのための接着剤や部品も長期保存に適した材料を使用しています。

大切な写真フィルムをいつまでも保管できるよう、堀内カラーでは、これからもお客様に最適なご提案を行ってまいります。 古い写真フィルムの保存についてお困りの方、まずは一度ご相談ください。

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