アイリーン・スミス

暗室作業の徹底したこだわりを
デジタルプリントで再現

作品の著作権管理を行う「アイリーン・アーカイブ」を運営するアイリーンさんは、つなぎ美術館より展示会開催の呼びかけを受け、ネガのデジタル化などで10年以上前からお付き合いのあった堀内カラーにプリント制作を依頼してくださいました。「技術の高さはもちろん、つねに私の話にじっくり耳を傾けて思いをくみ取ろうとしてくださる姿勢も非常に信頼していました」と、アイリーンさん。特にアイリーンさんが堀内カラーに信頼を寄せるきっかけとなったのが、写真集『MINAMATA』（2021年にクレヴィスより刊行）の制作を巡るやり取りでした。アイリーンさんの求める階調を忠実に表現する作業に印刷会社が難航していた際、堀内カラーのプリンティングディレクターが同行して印刷担当者に助言したことで、アイリーンさんの満足される仕上がりを実現できました。「その経験があったので、オリジナル作品をもとにデジタルプリントを制作するという今回のチャレンジには、堀内カラーの力が必要だと考えたのです」と、アイリーンさんは語ります。ユージン・スミス氏の暗室作業への徹底したこだわりは伝説的に語られており、そうした緻密なワークによって生み出された作品をいかにデジタル技術で再現するか――。アイリーンさんと堀内カラーのプリンティングディレクターは何度も膝を突き合わせて話し合いを重ねました。結果的に、大変満足できる仕上がりになったと、アイリーンさんは話します。「当然、オリジナルとは質感などに違いはありますが、暖かみのある表現が素晴らしく、作品を通して訴えたいことが見る人の心にスッと届くのではないかと感じました」。今後もアイリーンさん個人として、さらにアイリーン・アーカイブの運営者として、社会にポジティブなメッセージを発信する多様な活動を続けていくお考えです。「今回の展示会は堀内カラーの存在がなくては成立しなかったと思います。これからも作品のデジタルアーカイブ化など様々な活動を進めていく中でご協力いただけることを期待しています」。